筆ペンをカスタムして水筆として使う、あるいはその逆について

筆ペンと水筆の記事の続き。
前回は、ぺんてる筆を水筆として再利用出来るかもしれない、という話だけで終わっていた。その後実際に簡単な細工をして使ってみているが、それなりに使える、という結論に至ったので記録しておく。
言わずもがなだが細工もメーカー想定外の使い方も全て自己責任。

細工の内容

ぺんてる筆を水筆として再利用する場合に面倒なのが、カートリッジの口の黒いパーツ。そのままでは洗浄その他が面倒なので、外しっぱなしにしたい。紫色のボディと透明軸側の黒いパーツとの距離をきっちり詰めてやれば水漏れは無さそうなので、ひとまず透明軸の内部にスポンジを仕込んで距離を稼ぐことにした。水量はスポンジの調整でどうにかできそう。
(カートリッジ側の黒いパーツの代わりに O リング、という方法では水の吐出量が多くなり過ぎるなど難ありだったので、透明軸の方に細工することにした。)

手順や留意点等

分解

【写真】外すポイント
なにはともあれまずは透明軸部分の分解から。穂先側から尻側に向けて、穂首の黒い部分をグッと押し込んでやると簡単に外れる。今回は軸内に仕込んであったスポンジが劣化していたので、それも外した。
【写真】外したところ
劣化したスポンジはメラミンフォームで代用することにした。

ちなみにこの時、分解前には割としつこく洗浄したにも関わらず、穂先の毛束をまとめて溶着してある辺りまで水ですすいでみたら、インクの色が少し残っていた。他の水筆も大体同じような構造なので、アクリル絵の具は不可、という注意書きがあるのも納得。

工作

もし O リングが手に入るなら、適当な厚みにカットしたスポンジ(水の吐出量調節用)と O リングの組み合わせでも良いかもしれない。が、とりあえずスポンジだけで何とかしてみた。

透明軸内部に仕込むスポンジは、これもメラミンフォームをテキトーにカットして使用。メラミンフォームは何かと便利。円柱は難しいのでとりあえずラフに八角柱を作って、中心を途中までポンチでくり抜いた。この深さで、水量の調節ができる。(ちなみにきれいな形を作る必要は全く無い。大体で大丈夫。)
【図解】隙間埋めパーツ概要
メラミンフォームは濡れると案外しっかり潰れるようなので、八角柱の長さは割と長めに、ひとまず 10~15 mm くらいにしてみた。それより短いと潰れ過ぎて隙間が空いてしまい、最初は大丈夫だと思ってもそのうち水漏れする(実験済み)。ポンチでくり抜く深さは、半分~1/3 残すくらいが好みだった。完全にくり抜くとパッキンの壊れた水道みたいになる。

組み立て

あとは穂先を透明軸に戻して、八角柱を入れて、黒いパーツを緩めに入れたところに紫色のボディをねじ込む。一度ねじ込めば黒いパーツは落ちてこない筈。

雑感

ぺんてる筆の穂先、しなやかで使い心地抜群。日本の宝だ。水筆もちゃんと買ったのに、結局こっちの再利用筆ばっかり使ってしまう。しかも、耐久性も高い気がする。常に水が入った状態でペン立てにスタンバイしておいて 2年以上、たまにちょいちょい使う程度ではあるけど、今のところ穂先のまとまりや弾力、細書きの時の筆跡のエッジなど、全く問題なく使えている。この子、好きだわー。

一方呉竹の水筆の方はあまり使っていない筈なのに穂先の毛の先端がわずかにカールしてきてしまって、筆跡がより一層ぽってりするようになった。ぺんてる筆の穂先と比べると、素材が違うせいか水と馴染みにくいようで、穂先まで繊細に水を送るのが苦手な印象。ぺんてる筆再利用の水筆と同じくスポンジを仕込んでみたりはしたものの、構造が少し違うので水タンク側の黒キャップは外して運用はできなそうだ(水漏れする)し、水の吐出量も大して減ることはなく、筆跡は相変わらずぽってり。細筆タイプ(小)はどうか分からないが、この中筆タイプはやはりエッジをぼかした表現や、広範囲をざっくり塗るような使い方が向いている子なのかも。もとより文字書き用ではないし。むしろトメ・ハネ・ハライが下手クソなのをもにょっと誤魔化すには良さげ。こっちはこっちでまた別の用途を探ろうと思う。

水筆を常にすぐ使える状態にしておくと何かと便利だなと、使うようになって初めて知った。万年筆で誤字った時の修正や、切手貼り、突発的に発生するちょっとした拭き掃除(!)、そしてもちろん普通に水筆としての用途と、実は色々使える。※追記:昨今大人気のガラスペンの洗浄にも便利。使った後すぐに水筆でササッと撫で洗いして拭いておくと、面倒臭くない。ガラスペンの軸が木だったりする場合も、軸までじゃぶじゃぶしないので安心。数日置きに水を入れ替えがてら洗浄するという手間はあるものの、使おうと思った時にすぐに使えるところに 1本あると、大変便利。

買い増した水筆

そして実はもう 1本、ぺんてる Vistage のスリムな水筆を買った。ぺんてる筆や呉竹フィスよりも軸が短くて細くて、可愛らしいサイズ。一般的なボールペンとほぼ同じ長さなので、ペンケースに入るんじゃよ。
【写真】水筆サイズ比較 ボールペン編
↑ 写真左から 三菱 JETSTREAM スタンダード、ぺんてる ヴィスタージュ、PILOT Dr.GRIP 4+1
【写真】水筆サイズ比較 筆ペン編
↑ 写真上から ヴィスタージュ、ぺんてる筆、呉竹フィス

穂先の形にも少し特徴がある。ぺんてる筆のうす墨のタイプ(中字と同等?)より少しだけ小ぶりで、穂先はシュッと心持ち細くなっている印象。
【写真】穂先比較
↑ 写真左から ぺんてる筆、ヴィスタージュ、呉竹フィス、くれ竹万年毛筆卓上8号

この子は比較的水の吐出量が少ない。軸が硬めなので押してもあまりじゃぶじゃぶ出ない。短くて細いということは水タンクも小さいということで、じゃぶじゃぶ出すとあっという間に空になってしまうわけで、この水分量では洗浄が不十分になりがちかな、とは思うものの、この絶妙な水分コントロールと穂先の形によって、細い字も太い字もいける。よくできているなぁと思う。

【写真】ぺんてる Vistage みず筆 分解の図
そしておそらく、水の代わりにインクを入れても程好いのではないか(インクフロー的に)。……と思ったりするが、美しい白い穂先がもう少し汚れるまで、試すのは待とうと思う。穂先パーツは分解できないようだし。
【写真】ぺんてる Vistage みず筆 穂先と水入れの接続部分 アップ
(もちろんパッケージには水以外入れてくれるなと注意書きがあるわけで、これも当然試す場合は自己責任。)

カラー筆ペンの選択肢

いやしかし、呉竹からっぽペンにカートリッジが使える毛筆タイプが仲間入りした昨今、無理矢理水筆にインクを入れてカラー筆ペンを作る以外にも分かりやすい選択肢が増えて、喜ばしい次第である。からっぽペン、8号っぽい見た目なのだけど、Platinum のカートリッジと互換性あったりするかなぁ。(8号はカートリッジ共用できるので、手持ちのものにはプラチナのカートリッジを使用中。)空のカートリッジも同時に発売されているので、いろいろと、夢が拡がる。

※追記 : 早速文具王が検証していてありがたや。プラチナ互換ということで、安心して買えるでござる。
【連載】文具王の動画解説 #398 呉竹「からっぽカートリッジセット」 – 文具のとびら
【連載】文具王の動画解説 #399 【お詫びと訂正】呉竹「からっぽカートリッジセット」 – 文具のとびら
訂正の動画では透明軸を使って構造が分かりやすく解説されていて、大変勉強になります。ありがたや……ありがたや……(合掌)

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